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いつでも好奇心

X(旧Twitter)のいいね数非表示が改善かもしれない3つの理由

 

すっかりイーロン・マスクのおもちゃ扱いになってしまっているXですが、これは改善というべきでしょう。

いいね数やRP数が表示されなくなれば、今Xで悪質な投稿をしている人たちはかなりの打撃を受けると考えられます。

さらに、無名なため全然いいねを押してもらえないアカウントが、それゆえに低く評価されることも減るでしょう。

今後はいいね数ではなく、発言の質そのものが評価されるので、インフルエンサーとそうでないアカウントの格差も縮まるかもしれません。

イーロン・マスクが何を意図してこの改革をする気かわかりませんが、この「いいね数非表示」がXにどんな影響をもたらすか、3点に絞って解説していきます。

 

1.デマ垢・ヘイト垢が減る

残念ながら現状、Xにおいてはデマや陰謀論、ヘイトを撒き散らすアカウントが多数存在しています。

それは結局、その手の投稿がたくさんのいいねを稼げてしまうからです。

かつてXがツイッターだった時代から「怒りのSNS」と言われていたとおり、Xは誰かを叩いたり、貶めたりする投稿が人気でした。

それだけストレスをためているユーザーが多いのでしょう。

そしてX時代になり、インプレッション数に応じて収入が得られるようになったことで、この流れは加速しました。デマやヘイトは安易にインプレッションを稼げてしまうため、収益を得るためにここに手を出す人が増えたのです。

 

ですが、いいね数が非表示になれば、「いいねがいいねを呼ぶ現象」がなくなります。

Xの発言は、内容だけで評価されているわけではありません。「いいねがたくさんついているから、これはいい投稿なんだろう」というふうに、数字による権威化が起きているのが現状です。

ですが、今後はこの権威化が不可能になるので、おかしな発言の拡散もある程度は歯止めがかかるでしょう。

また、この改変により、デマ垢やヘイト垢の運営者が承認欲求を得にくくなります。

デマやヘイトを撒くのはお金目当てでもありますが、いいね目当てでもあります。悪質な発言をする動機が減るのですから、デマ垢も減る傾向になるでしょう。

変な発言をする人のなかには、収益など度外視してただ目立ちたい人も少なからずいるので、そうした人は激減すると考えられます。

 

さらにいいのは、差別発言が多くの支持を得ているのを見る機会がなくなることです。

先日、「障害者は子供を産むなというツイートに一万以上のいいねがついている」と嘆いている人を見かけました。その人は障害児の母親です。

身内に障害者がいる人にとり、差別発言に多くの人が賛成してしまうSNSは脅威でしょう。

ですが、いいねが非表示になれば、差別発言を支持する人の数も不可視化されるのです。

差別・ヘイト発言がたくさんのいいねを得ている様子を見れば、差別主義者は余計に勢いづきます。こんなに多くの仲間がいるんだという連帯感が、差別を加速させるからです。

いいね非表示は、この流れに歯止めをかけるでしょう。結果として、差別に苦しむ人を減らすこともできるわけです。

 

2.発言の内容自体が評価される

これは1.とも関連しますが、いいね数が非表示になることで、発言の内容自体が評価されやすくなります。

いいね数は、ある意味投降の「戦闘力」です。いいねやRP数の多い投稿は、どうしてもそれだけでいいものに見えてしまいます。ラーメン発見伝ではありませんが、私達は「投稿を読んでいるのではなく、情報を読んでいる」面があります。

確かに、いいね数は発言の価値を決めるひとつの指標ではあります。ですが、Xは誰かを勢いよく叩く投稿や、差別的な投稿が多くのいいねを集めてしまう空間でもあります。

この事実ひとつとっても、いいね数が多い=投稿の価値が高い、でないことは明らかです。ですが、明らかに間違っていても、陰謀論やヘイト発言のように誰かを心地よくさせる発言は、たくさんいいね数を稼いでしまうものです。

結果として、あたかも差別的発言に正当性があるかのように見えてしまうデメリットがあるのです。

 

コミュニティーノートは、この「いいね数が多い=よい投稿」という思い込みにある程度歯止めをかけることはできたでしょう。

インフルエンサーのおかしな発言がたくさん拡散されても、コミュニティーノートで修正される機会は明らかに増えました。

一部の左派は「消せないクソリプ」などといってこの機能をくさしますが、コミュニティーノートはネット右翼の発言にだってついているのだから、その評価は当たりません。

それはともかく、コミュニティーノートでデマを修正するのには手間暇がかかります。デマの間違いを修正するより、そもそもデマを撒く気にならないようインセンティブを与えるのが一番いいのです。

 

そのためには、いいね数の非表示はかなりいい解決策です。いいね数が見えなくなることで「数字による権威化」ができなくなりますから、今後はより内容本位で投稿が評価されることになります。

これは、無名のアカウントにとってはチャンスでしょう。

影響力の少ないアカウントは、どうしてもいいね数が稼ぎにくいものです。いいね数が少ないと、それだけで発言の質が低いとみなされてしまい、よけいに評価が得にくくなるのです。

ですが、今後はそんな偏見からも自由になるわけです。逆に、インフルエンサーにとっては逆風でしょう。

有名人の発言は、それだけで高く評価されがちです。同じような発言でもインフルエンサーが言っているだけでいいねを集めてしまい、それがさらに多くのいいねを呼びます。

いいね数非表示により、このサイクルに歯止めがかかります。インフルエンサーの「戦闘力」が見えなくなることで、有名人も無名人も、すべての発言が同列に並ぶことになるので、有名人のオーラが弱まることになりそうです。

といってもインプレッション数は残りますので、インフルエンサーが今後も有利ではあり続けるでしょうが、その有利さが減っていくとは考えられます。

 

3.嫉妬や承認欲求ですり減ることがなくなる

www.youtube.com

どんなSNSも、長時間使用すればメンタルが悪化します。

SNSに浸ればかんたんに自分の上位互換が見つかってしまい、自分が大したことのない人間に思えてくるからです。

当然、Xも例外ではありません。自分よりも輝いている人、稼いでいる人、評価を得ている人がいくらでも見つかります。

上記の動画で言われているとおり、他人のキラキラした投稿などその人のほんの一部でしかないのですが、それでもSNSを使っていれば、つい他人と自分を比較してしまうのは避けられません。

人間は社会的動物なので、自分が人間社会においてどのあたりの位置にいるのか、を考えずにはいられないのです。

 

ですが、いいね数が非表示になることで、他人のキラキラ度が減ります。いいね数=承認された数なので、承認に飢えている人からすれば、たくさんいいねを押されている投稿を見るだけでもダメージになり得ます。

発言の承認度がわからなくなれば、他人の投稿を見て嫉妬することも減るでしょう。

いいね数は発言の評価として最もわかりやすいものなので、ここが見えなくなることで、自分と他人を比較する機会も少なくなります。

インフルエンサーとそうでない人の格差は残るでしょうし、いいね数以外にも他人と自分を比較する要素はあるわけですが、一番わかりやすい「発言の戦闘力」が見えなくなることの影響力は小さくないでしょう。

他人の力の大きさや、自分の無力さを見せつけられることがなくなる世界では、メンタルの落ち込みもある程度は食い止められるかもしれません。

 

デマやヘイトとの関連でいえば、そうした発言はある意味「SNS負け組の逆襲」でもあるのです。

これといった専門分野を持たず、価値ある情報を発信できない人でも、そうしたジャンルならいい加減な発言でもインプレッション数を稼げてしまうからです。

何物にもなれない悩みをヘイト発言で解消してしまうほど虚しいこともありませんが、いいね数が見えなくなれば、そもそも「何物にもなれない」という悩みも減るでしょう。

メンタルが悪化しなければ、無理やり自分に価値をつけようとしてデマを流したり、ヘイトを撒いたりすることも減るのです。

まぁ、メンタルを壊したくないならそもそもSNSから離れるのが一番なのですが、X含めSNSは世界中の天才たちがユーザーを依存症にさせるよう設計しているので、それもなかなか難しいものです。

Xを離れられないなら、他人との比較材料が減るいいね数非表示は、メンタルヘルスの点からは歓迎できる改変になるでしょう。

ただしいくつかの懸念も……

ここまで「いいね数非表示」のよい点を並べてきましたが、これでXが理想の空間になるというわけではありません。

まず懸念点としては、インプレッション数は残るということです。いいね数やRP数が表示されないなら、その投降を評価できる数字はインプレッション数のみとなるので、これを最大化するようにふるまう人が増えることが予想されます。

結果として、さらに発言が過激化する人が出てくるリスクも否定できません。

評価軸がインプレッション数しかないのなら、収益を伸ばそうとする人が安易な炎上商法に頼ってくる可能性は残ってしまうのです。

 

さらに問題と思われるのは、良質なアカウントもやる気をなくす可能性があるということです。

確かにXは悪質な発言が人気を得てしまう場ですが、一方で良質な投稿がそれ相応に評価されることも多くあります。

研究者による質の高い情報などはその代表といえるでしょう。

そして、良質なアカウントにとってもいいね数はモチベーションの源泉です。質の高い投降者にだって当然、承認欲求はあります。

そこを満たす手段がなくなれば、わざわざ良い情報を流す意欲が削がれます。事実、私の知っている研究者も、「これならブルースカイに移住したほうがいい」とつぶやいていました。

いいね数をやる気の源泉にしている悪質アカウントを駆逐すれば、良質なアカウントまで巻き添えにしてしまう危険もあるのです。

身近な人とのやり取りだけをしたい人ならそれで困ることもないでしょうが、Xを情報収集の手段としている人にとっては、良質アカウントが消えるリスクは無視できません。

下手をすると、この改変がXからブルースカイへの移住を加速させることにもなりかねないのです。

 

さらに付け加えるなら、そもそもこの改変が定着するかが不明、ということもあります。

イーロン・マスクはかなり気まぐれというか、衝動的にさまざまな変更をXに加えている印象があります。

彼の性格傾向からして、「いいねを非表示にしてみたけど、不評だったのでやっぱりやめました」という結末になる可能性だって、決して小さくないわけです。

これでヘイトが減るならいいことだ、と思っていたら結局元に戻ってしまった、という未来も想定しておかなくてはいけません。

今まで述べてきたとおり、この改変でXからユーザーが流出する可能性は十分にあるので、事実そうなったらマスクはいいね非表示をやめるかもしれないのです。

そうなれば、またいいねが戦闘力になる世界に逆戻りです。インフルエンサーと無名アカウントの格差は再び拡大し、ヘイトやデマは再拡散され、何物にもなれない人がコンプレックスに悩む日常がまたやってくるでしょう。

あまり悲観的なことを言いたくありませんが、そうなる可能性自体は意識しておく必要があると思います。

 

根本的解決はSNSから離れることしかない

Xだけでなく、多くの人が集まるSNSでは必然的にトラブルも起きますし、心を疲弊させます。

特に喧嘩などをしなくても、自分より優れた人を簡単に発見できてしまうので、見れば見るほど自信はなくなります。

この弊害を防ぐには、結局のところ、SNSの使用時間を減らすしかありません。

Xの治安悪化は問題ですし、いいね数非表示によってこれがある程度は改善されるかもしれません。ですが、SNSSNSである以上、ここでメンタルが悪化する可能性は残り続けるのです。

 

 

意志の力ではどうしてもSNSから離れられないなら、タイムロッキングコンテナを使うのも手です。あのRORANDさんですらスマホいじりをやめられず、自分で「タイムロックポーチ」を開発しています。デジタル機器のデメリットをなくすためにさらに別のデジタル機器が必要になるのは文明の皮肉という感じがしますが、結局、人類にはまだSNSは早すぎたということかもしれません。人間の脳がまだ狩猟採集時代から進化していない以上、いいね数という果実がたっぷりとれそうなSNSの誘惑は断ちがたいものがあるのです。