「自己肯定感」とはそもそも何か
そういうことだったのか……
この本を読んでいて、なぜ以前の私が創作で苦しんでいたのか、ようやくわかりました。
私は自己肯定感が低い状態で小説を書いていたので、褒められれば自己肯定感を上げられると当時は思っていました。
でも、作品を褒められることで上がるのは自己肯定感ではなく、自己効力感のほうだったのです。
そして、自己肯定感が低いまま自己効力感を高めるのは地獄への道なのです。
まず、自己肯定感と自己効力感それぞれの定義から見ていきましょう。
それぞれの言葉の意味はこのとおりです。
自己肯定感:良い面も悪い面も含め、ありのままの自分を受け入れること
自己効力感:自分は何かができるという気持ち
私は小説が上手い!ということで自分を肯定するのは自己肯定感ではなく、自己効力感です。
自分はなんらかの面で有能だから自信を持てるというのが自己効力感ですが、人はしばしば自己肯定感の不足を自己効力感で埋め合わせようとするのです。
ありのままの自分には価値がないので、何か成果を上げることで自分を肯定しよう、というわけですね。
自己効力感を高めるために創作をすると、待っているのは地獄
自己肯定感が低いのに、「私は小説が上手い」という自己効力感だけを得ようとすると、小説が褒められているときしか自分を受け入れられません。
つまり逆境に弱いということです。
長い人生、うまくいくことばかりではありません。「失敗成功とは関係なく自分には価値がある」という自己肯定感が育っていないと、つねに成功し続けなくてはいけないことになります。
自分の価値を証明するために必死に走り続けなければいけない、疲れる生き方しか選べないのです。
といっても、自己肯定感が高い人は努力しないということではありません。
自己肯定感が高いと、無理に高いポジションを得ようとしなくなるので、現実的な目標が立てられ、むしろ努力がしやすくなります。
失敗した自分も受け入れられるので立ち直りも早いですし、努力も継続しやすくなります。
自分の価値を証明しようと無理な努力をしなくなるので、心が安定するし、人と比較することもなくマイペースで生きられます。
つまり、自己肯定感が高いと幸福度も高いのです。
人が創作をするのは、究極的には幸せになりたいからです。
作品が多くの人に受け入れられ、多くの読者を得られればそれは幸せでしょう。
でもそうならなくても、自己肯定感の高い人は幸せなのです。
だとすれば、まず先に幸せになればいいのではないでしょうか。
つまり、創作での成功を目指すより、まず自己肯定感を高めたほうがお得なのです。
自己肯定感が高いと逆境に強い
詳説を書いている人の中には、大して読まれなくてもまったく平気な人がいます。
そういう人は好きな話を書くこと自体を楽しんでいるように見えます。
もちろん、そういう人もたくさん読まれればより嬉しいでしょう。でも、読まれないからといって自分を責めることもないのです。
そういう人は、自作の評価や読者の多寡と自分の価値を結びつけません。「読まれなくても、それはそれ」と淡々と対処できるのです。
これは自己肯定感が高いからこそできることです。
現実を見て一喜一憂する人より、マイペースで創作できる人のほうが長く続けられそうですよね。
そして、何事も長く続けられる方が結果が出るものです。
自己肯定感が低くても、創作で成功する人はいます。
そういう人は自分の価値を証明しようと頑張るので、非常な努力家になることがあるのです。
努力を重ね、作品が評価されれば自己効力感が得られ、成功しているうちは自信を持つことができます。
でも人間、つねに成功し続けられるものではありません。評価されなくなると裸の「価値のない自分」が浮かび上がってきて、その自分に耐えられなくなります。
その結果がアルコール依存や薬物依存、過食や他者への攻撃といった形で現れるのです。
一時は成功できても、これでは大変つらい人生になってしまうのです。
自己肯定感を高める方法とは?
では、まず自己肯定感を高めるにはどうすればいいでしょうか。
『鋼の自己肯定感』ではさまざまな方法が紹介されていますが、そのひとつとしてアファメーションがあります。
毎日ポジティブな言葉を自分にかけていくことで、自己肯定感を高く安定させることができるというのです。
この本では、効果的なアファメーションのひとつとして「私はなにも証明する必要はありません」を紹介しています。
無条件に自分を肯定できるのが自己肯定感なので、自分を肯定するために何かを証明する必要はないのです。
こうした言葉を自分に言い聞かせることで、しだいに自己肯定感が上がっていくそうです。
この本では少なくとも3週間、毎日こうしたアファメーションを唱えることが推奨されています。