lstf's blog

いつでも好奇心

その夢が「本当にやりたいこと」かを確かめる方法

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先回お話ししたとおり、私はブックオフ「プロ作家になれるかどうかと私の幸せは関係ない」という気づきを得ました。

ですが、創作仲間と交流するうちに、また「プロ未満の自分はダメな存在なんじゃないか……」という気持ちが復活してきたのです。

当時、私が交流していた人達のなかにはプロ作家も何人かいました。

彼らは時おり作家志望者の発言を取りあげては、「これだからワナビはダメなんだ」といったことを口にしていました。今思えば、作家志望者の未熟な発言を反面教師とし、自分を戒めていたのだと思います。

 

ですが、自己肯定感の低かった私は、そのワナビ批判を自分に向けられたものと捉えてしまったのです。

ワナビのままだと見下されてしまう、ならプロにならなければ……と、ちょっと方向性を間違えた努力を始めてしまいました。

結果、私のメンタルはますます悪化し、結局何も書けなくなってしまいました。

「自分は作家未満の無価値な存在だ」と考えすぎてしまい、そんな無価値な人間にいいものが書けるはずがない、と思ってしまったからではないかと思います。

今ならこれがまったくの勘違いであることはわかりますが、精神的に余裕のないときはついつい極端な思考に走ってしまうものなのです。

 

精神の危機を感じた私は、しばらく創作集団から離れることにしました。

そして小説の執筆も一切やめ、暇な時間は好きなことを思い切り楽しもう!と決めたのです。

その結果、私のメンタルは順調に回復していきました。「アマチュア作家はプロ未満の劣った存在」という価値観も薄れていき、小説のことを考える時間も減っていきました。

小説よりも新書や学術書を読む時間が増え、プライベートの時間は充実していきます。そして一年が経ち、小説を書かなくなっていた私ははっきりと理解できました。

自分は「他人の夢を自分の夢にしてしまっていただけだった」のだと。

 

小説をはじめたばかりのころ、私はただ好きな作品を書いて、ある程度の人に読んでもらえればいい、と思っていただけでした。

プロ作家への漠然とした憧れはあっても、本気でプロになろうとは別に思っていなかったのです。

ですが、プロを含めた創作者たちと交流するうち、いつのまにか「もっと上を目指すべき」という考えに染まっていったのです。

プロはアマチュアにくらべれば、当然意識は高いものです。売れなければ生活できませんし、趣味で好きなことを書ければいいというアマチュアの立場とはどうしても隔たりがあります。

ただ趣味で小説を書くのはレベルが低い、と考えてしまった私は、小説でお金を稼げるレベルの高い作者に脱皮しなくてはならないと考えるようになり、気がついたら立派なワナビになっていました。

人の欲望は伝染するということを、私はここで学びました。

 

ですが、感染した欲望の影響力は一時的なものです。

創作集団から離れた私は、一年ほどで、ほぼ完全に「小説でお金を稼げないのは価値の低い人」という考えから脱却できました。

その結果、執筆意欲も半分以下にまで減ってしまっていますし、プロ志向もほとんどなくなりました。

私のプロ志向は周囲の影響であって、本当の願望ではなかったのでしょう。

もし、私が本当にプロ作家になりたいのなら、創作集団を離れてもプロになることをあきらめられないはずです。

でも私の場合、そうではなかった。

 

創作に限らず、好きなことに打ち込んでいるはずなのに、なぜか苦しい……と思っている方は少なくありません。

その苦しさは、実は「他人の夢を自分の夢と思い込んでいる」ことから生じているケースもあるのではないでしょうか。

今取り組んでいることが本当にやりたいことなのかわからない、という場合、私のように今の人間関係から離れてみる、というのもひとつの手だと思います。

先にもお話ししたとおり、人の欲望はどうしても伝染してしまうものです。今いる集団が「年収1000万円に達しない奴はダメ人間」という価値観に染まっていたら、自分だけそこから逃れるのはむずかしいでしょう。

この価値観から抜け出すには、その価値観を支持する人たちから離れるのが一番です。それでもなお「やっぱり年収1000万円以上稼ぎたい」と思うのなら、稼げるよう努力すればいいのです。本当にやりたいことのために努力するなら、モチベーションも上がるでしょう。

よくないのは、人に植えつけられた価値観のために頑張ることです。要は他人になるための努力なのだから、努力すればするほど苦しくなります。

そうならないためにも、今の人間関係を絶対のものと考えないのは大事なことかもしれません。